今年の高円宮杯が終われば、二人で一緒に公式戦に出ることはなくなる。
■カスーラのかけら■
その日は空が抜けるような青さで。
あいつと一緒にサッカーをするのは何度目の季節を数えるのか。夏が過ぎて、冬が来て、また夏が来る。初めて深川のグラウンドで会ってから、長い時間が経った。
中学の時良く行ったサッカー場。
見る度にプロになりたいと口にするあいつは、強い意志を持って目を見張っていた。右からあがるクロスにあわせて、ゴールに飛び込むFWに、固唾をのんで集中した。信じられないようなカウンターで得点する瞬間も何度も見た。
「オレ高校卒業したらスペインに行く」
そう聞かされてから一週間。
あいつの唐突な発言はこの数年間でかなり慣れたと思っていただけに、対応しきれなかった自分を悔やむ。と、いうよりその発言自体が青天の霹靂といおうか。
確かにあいつのプレースタイルはスペイン的だと思う。だけど、あいつはスペイン語話せないだろう。まぁ、向こうに行けばどうにかなるんだろうけど。でも、バルサやレアルにいるあいつはイメージできる。
俺は高校を出たらたぶん地元でサッカーを愛して終わるんだろうな。そう考えても別に寂しくも悲しくもない。あいつにはあいつの才能があるように、俺にも家業を継いでその中でサッカーを愛していくという才能があるんだと思う。人の一生なんてそんなものだろうな。そいつなりのサッカーへの愛し方がある。あいつがバルサやレアルで活躍すれば、そのチームを応援する。あいつの飛び出しにワクワクするんだろう。俺は地元のサッカーチームを愛して、週末になればその応援に行く。順位が下がればがっかりしながら一週間を過ごし、勝てば喜びで日々を過ごす。試合のない日はリーガを見てあいつの姿を追うんだ。そして、今から何年かして、五輪や、ワールドカップを見たら真っ先に目がとまる選手にあいつはなる。その時、最大限の誇りを持ってあいつに笑いかけられるように。
「おい」
「ん?」
「勝ちにいくぞ」
「あったりまえだって」
満面の笑みで返してくる。
あいつにクロスをあげるのもこの選手権が最後になる。
思い切り左から攻撃してやる。
円陣を組み、声をあげる。
最後の、そして始まりのホイッスルがピッチに鳴り響いた。
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